江戸川法律事務所 お問い合わせ
TOPページ 事務所のご案内 所属弁護士 取扱分野 費用について 法律相談 エッセイ

ある少年の試練−千葉県の暴挙−
鈴木 篤(2001年記)

前々号の「常磐木」で、何重苦もの重篤な後遺障害と闘いながら、病院の責任を追及する訴訟に立ち上がったA君のことを紹介しました。訴訟は、現在原告A君側の主張と、被告千葉県などの主張のやりとりが続けられています。

ところで、A君は、問題の医療事故の後も、事故を起こした千葉県立X病院で治療とリハビリを受け続けてきました。A君も御両親も、事故は事故として、その原因と責任を明確にし、同じような事故を繰り返させないことを願いながら、だからといって
X病院そのものを否定したり、信頼しないという姿勢は取らなかったのです。

ところが、最近になって、X病院側は、突然A君に対する診療拒絶の通告をしてきました。曰く、訴訟をしていることに現れているように互いの信頼関係が無くなっている。曰く、A君は成人であり、もう小児科ではないので当院で診療はできない。曰く、X病院の救急体制には限界がある等々というのです。

とんでもない話です。訴訟をするような患者との間では信頼関係は作れないというのであれば、病院は一切の批判は認めないということです。人はみな過ちを犯します。それは医師であっても同じです。過ちを犯した時、それを批判するのは、根底に信頼があるからです。だから、2度と同じ過ちを繰り返して欲しくないという願いを込め、その責任を明確にするための訴訟に立ち上がったのです。もし、本当に不信以外の何も無いなら、事故から5年以上もの間、同じ病院で治療を受け続けるはずもありません。ですから「信頼関係が無い」という口実は、X病院側が、訴訟をするような患者は信用出来ないと思っているということを言っているに過ぎません。病院が間違いを犯そうが、何をしようが、黙って病院に従っているなら診察をしてあげるけど、病院を批判したり、間違いを正そうとしたりするなら診察をしないというのですから。

 「A君はもう子供ではない。こどもを診察することを目的に設立された病院で、そういう患者を診察することは出来ない」というのもとんでもない嘘です。A君は、今20歳です。こどもの頃から、継続して治療を受けるような病気を抱えている場合、大人になっても、相変わらず同じ小児科で受診しているというケースは他の病気でもしばしば経験することです。例えば、血友病患者は、こどもの時からずっと同じ血友病専門医に診察を受ける事が多いのですが、そのため、30歳を超えても小児内科の外来に通っているなどということがしばしばあります。同じように私の息子のような先天性の心臓疾患では、20歳を過ぎても未だに外来は小児科で受診しています。それは生まれたときからの診療の経過についての記録が全て小児科にそろっているからですし、そこの医師が当該の患者を良く知っているからです。現に、X病院でも、A君と同じ診療科には、A君たちが知っているだけでも、20歳を超えた患者が何人も入通院しています。そうした実態があるのに、突然、「こどものための病院だから」という形式論理を振り回して診療拒絶を通告するというのは、明らかに本当の理由は別のところにあると考えざるを得ません。

別の理由というのは、訴訟を起こしたことへの報復です。
こんなことは、医療裁判を20年以上担当してきて、初めての経験です。正に千葉県の暴挙、というしかない出来事です。

この暴挙を前に、しかしA君はくじけていません。今、特殊な方法で入力するように工夫されたパソコンを使ってA君は、この暴挙に対する抗議の文章を自力で作成しています。重い障害を負ったA君は、1文字を入力するためにも何分もの時間がかかるのです。このニュースの1頁相当の文章を入力しようとしたら、気の遠くなるような日数がかかるのです。それでも、A君は、今その困難な作業に挑戦しています。堂本暁子知事のメールアドレスに自分の気持ちを「直訴」しようというのです。
 A君の闘いを応援して下さるよう心からお願いします。

エッセイTOPへ / 上へ

Copyright (c) Edogawa Law Office All rights reserved.