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気管内挿管
小栗 夏生(2002年記)

「気管内挿管」とはチューブを気管に入れ、酸素を送る人工呼吸法です。本来、医学の専門用語であるこの言葉を最近は多くの方がお聞きになったことと思います。これは、本来医師のみが行えるこの医療行為を、秋田など数県において救急救命士が行っていたことが明らかになり、問題視されました。医師ではない救急救命士が気管内挿管を行えば、医師法や救急救命士法に抵触します。
救急救命士の行為が違法であれば、それを禁止すれば済むだけですが、この問題はそのように簡単ではありません。というのも、秋田市の心肺停止患者の救命率は全国平均の2倍以上であり、現実に多くの患者の命を救ってきたと思われるからです。

それでは、救急救命士も気管内挿管をできるように法律を改正すればよいか、ということになります。実際に、消防庁が厚生省に対してこのような申入れをしています。しかし、これも簡単にはいきません。気管内挿管には誤挿管というミスがつきまとうからです。気管内挿管は口からチューブを入れるのですが、口の先には気管だけではなく食道もあり、十分な研修を積まないと誤って食道の方に管が送られてしまいます。こうなると、管がのどを閉鎖してしまい、その管から送られる酸素も胃に行ってしまうため、完全に呼吸ができなくなってしまいます。そうなると、患者を救うどころか、むしろ死に追いやってしまうこととなります。

実際、医師が誤挿管を行ってしまい患者が死亡したという事件があり、当事務所の3人の弁護士が代理人として提訴しました。
この件では、50代の働き盛りの男性が、のどの痛みを訴えて外来救急として入院後、呼吸困難となりましたが医師が気管内挿管に2回失敗し、3回目には食道に挿管してしまい、結局、亡くなってしまいました。訴訟では、一審で病院側の過失が認められましたが、ご本人はもとよりご遺族の方もさぞご無念だったと思います。裁判で認められた直接の過失は、医師の挿管ミスですが、その背景として、病院の受け入れ態勢に問題がありました。被告病院が2次救急病院であるにもかかわらず、唯一の救急担当の医師が80人程度いる入院患者の診察も兼務していたことにあります。このような態勢のもとでは、救急患者の診察もおざなりになってしまうのも避けられないかも知れません。

この事件をきっかけにして、医師の研鑽だけでなく、病院の受け入れ態勢も整備されることを望みます。また、現在議論されている救急救命士の挿管についても、十分な態勢を調えなくては、なりません。

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